溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
「…ルイさんの気持ちはとても、嬉しいです」
「…美々」

私は、ルイから体を離して、少し困ったような笑みを浮かべた。

「…ルイさんは、北条コンチェルンの社長ですよね。とても忙しい方です。私の傍になんて、居られません。いてはいけない人です。私は独りじゃない。寂しい思いなんてしません。貴方は、RoseJardinの、大事なお客様。そして私は、その店の一パティシエに過ぎません。それ以上でもそれいかでもない。ルイさんには、これからもっともっと大事な人が出来るでしょう。

もう、お店以外で、ルイさんにはお会いしません。

それでは失礼します」

そう言って、部屋を出ていく。

が、ルイは、それを許さないと言わんばかりに、私の手首を強く掴んだ。

「…ルイさん」
「…私には、美々、君が必要だ」

「…大企業の社長の言葉とは思えませんね」

…あえて、突き放すような言葉を言い放つ。

「…美々が、好きになれるのは、この私だけだ。他の男なんて、好きになれない。美々はもう、ずっと私のモノだ」

「…そんな事ありません」

そう言い捨てると、ルイの手を振り払い、私は家を飛び出した。

…ルイはもう、私を追いかけては来なかった。
< 26 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop