溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
病院に行くと、熱のせいで脱水症状まで出ていたらしく、点滴され、症状に合った薬をもらうと、ずっと付き添ってくれていた楓が連れ帰ってくれた。

「…楓さん、色々すみません」
「…悪いと思うなら、早く治すこと」

そう言って、頭を撫でた楓は、とても柔らかな表情。

「…ほら、横になって…なんか作ってくるよ。薬も飲まないといけないからね」

「…そんなことまで…仕事もあるのに」
「…病人は何も考えない。寝てろ、いいな?」

そう言うと、キッチンに向かい、うでまくりをすると、立ち慣れないキッチンに右往左往しながらも、手際よくお粥を作ってくれていた。

いつもは独りの部屋の中、今は楓が居て、自然な生活音に、安心したのか、私はいつの間にか深い眠りについていた。

…。

次に目を覚ましたのは、暗くなってから。

おでこには濡れタオル。

片手は誰かに握られていて、視線を向ければ、楓が私の手を握ったまま、眠っていた。

…楓も疲れているはずなのに。

近くにあったハーフケットを楓にかけてあげた。

「…ん…ぁ、ゴメン、俺まで寝てた」
「…起こしちゃいましたね、ごめんなさい」

「…熱、大分下がったみたいだな」

私のおでこに手を当てた楓はそう言ってホッとした顔。

私も少し笑みを浮かべ、頷いた。

「…お腹すいたろ?温め直してくるから」

そう言うと、そそくさとキッチンに向かった楓は、お粥を温め直して、それを持ってきてくれた。
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