素敵な王子様の育てかた。
やがて少し開けた場所に辿り着いた。
木漏れ日に注がれ、私の目には幻想的に映る。

開けた入り口にある一本の木には、だいぶ古ぼけていたが、木で作られた看板のようなものが枝にぶら下がっていた。
そこには子どものたどたどしい文字で、『ひみつきち』と書いてある。


「ここだ。ああ、懐かしいな」

王子はその先のある場所で立ち止まる。王子の視線の先には朽ちた木材の塊があった。

「昔はここに小さな小屋があったんだ。そこを秘密基地の拠点として使い、リフィトとよく架空の敵国との戦略を立てて遊んでいたりしたんだよ。もう一昔以上前のことになるけどね」

「男の子らしい遊びですわ、意外と普通の子供らしい生活を送られていたのですね。でも昔はそれなりに外に出て遊んでいらっしゃったのに、どうして引きこもりなんかに?」

単刀直入に問う。
王子は困ったように頭を掻いた。

「意外って……。子供の頃はなにも考えず素直に過ごしてきただけ。でも成長するごとに、自分への重圧や大人の汚い部分が見えてきて、それに耐えきれなくなってしまったんだ。一種の反抗かな。それが長引いてしまって自分でも受け入れるきっかけが掴めなくなり、今に至る。まあ、他にも色々とあるんだけど」

「他にも?」

「それは、おいおい。まだ自分の中で消化出来ていないから」


引きこもるようになったきっかけ。やはり私が考えていた通り、自分の将来への重圧以外にもきっかけがあったようだ。

そしてまだ王子の中で、燻っている部分があるらしい。

それでもこうやって外に出て、自分の過去を振り返るようになったのは大きな前進だと思う。

少しずつでいい、ゆっくりと浄化し受け入れていけばいい。
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