素敵な王子様の育てかた。


こうして私は侍女ではなく、王子の婚約者としてそのまま城で暮らすことになった。

王子には代わりに教育係も兼ねて、男性の執事が付くことになり、私には気楽に話ができる人間が傍にいた方がいいだろうと、屋敷で一番の古株だったリュカが付くこととなる。

それは私に対しての、王子なりの配慮だった。

些細な心遣いがとても嬉しく思う。


リュカはたいそう張り切って、城へとやってきた。

そして久しぶりに私を見るなり、涙をいっぱいためて『ご立派になられて……!』と声を詰まらせながら、私に抱きついた。

この感覚がとても懐かしく思えるほどに、私の運命は目まぐるしく変わったのだと、実感させられる。

前のような気楽な生活は望めないが、それでもリュカがこれからも傍にいてくれることが、これからの生活への心強さとなった。


それから王子はもちろん、私も王妃になるための勉強の日々。

元々気楽な貴族令嬢だったから、覚えることが多くそれはもう大変なもの。
莫大な量に、頭が爆発してしまいそうだった。

毎日ヘトヘトになっている私に、王子は無理をしなくていいと優しい声をかけてくれるが、でも王子のためだからと、逃げずに耐えた。

きっとひとりだったら、こんなことできやしなかっただろう。

愛する人がいるだけでこんなに頑張れるなんて、思ってもみなかった。


どれだけ辛くても、愛する人が笑ってくれれば充実した毎日になる。


――それは生まれて初めて分かったことだった。

< 185 / 190 >

この作品をシェア

pagetop