素敵な王子様の育てかた。
こうして私は侍女ではなく、王子の婚約者としてそのまま城で暮らすことになった。
王子には代わりに教育係も兼ねて、男性の執事が付くことになり、私には気楽に話ができる人間が傍にいた方がいいだろうと、屋敷で一番の古株だったリュカが付くこととなる。
それは私に対しての、王子なりの配慮だった。
些細な心遣いがとても嬉しく思う。
リュカはたいそう張り切って、城へとやってきた。
そして久しぶりに私を見るなり、涙をいっぱいためて『ご立派になられて……!』と声を詰まらせながら、私に抱きついた。
この感覚がとても懐かしく思えるほどに、私の運命は目まぐるしく変わったのだと、実感させられる。
前のような気楽な生活は望めないが、それでもリュカがこれからも傍にいてくれることが、これからの生活への心強さとなった。
それから王子はもちろん、私も王妃になるための勉強の日々。
元々気楽な貴族令嬢だったから、覚えることが多くそれはもう大変なもの。
莫大な量に、頭が爆発してしまいそうだった。
毎日ヘトヘトになっている私に、王子は無理をしなくていいと優しい声をかけてくれるが、でも王子のためだからと、逃げずに耐えた。
きっとひとりだったら、こんなことできやしなかっただろう。
愛する人がいるだけでこんなに頑張れるなんて、思ってもみなかった。
どれだけ辛くても、愛する人が笑ってくれれば充実した毎日になる。
――それは生まれて初めて分かったことだった。