素敵な王子様の育てかた。

――翌日。

私は前日と変わらず、王子の部屋の扉を叩いた。
相変わらず返事も物音ひとつしないけれど、諦めずに部屋の中の王子に向けて声をかける。

しかしその扉が開くことはない。


まあ、あたりまえか。

本人は侍女なんていらない、ましてやしつこい人間は嫌いだと言うし。
私がいると分かった以上、王子はこの扉を開けることはしないだろう。

だからこその部屋の鍵。
これを使えば、いとも簡単にこの中へ入っていけるわけだけど……。


でもなるべくなら使いたくはないのが本音。

むやみやたらに本人の許可なく、大切にしている空間に踏み入れるのは良くないことだと思うから。


できれば、私のしつこさに折れて心を、少しでもいいから開いてくれることを祈るのみなのだけど。



昨日のこともあり、当分は声掛けと食事を部屋の前に置くだけにして、それ以上の目立つ行動を控えることとした。

王子もかなり警戒しているだろうし、私がいるかもしれないと、食事すら摂らない状況になってしまってはそれこそ困る。


だから、一旦諦めた体を見せて王子を油断させる作戦。

ほどぼりがさめた辺りで、また接触を図ろうと考えたわけ。



< 59 / 190 >

この作品をシェア

pagetop