素敵な王子様の育てかた。

「正直、俺がこの部屋で引き篭ってさえいれば、いずれ父も母も諦めて国王の座を弟に譲ると思っていたんだ。それだけ俺は第一王子という座が苦痛で仕方なかったから。人前に出ず、いないように振る舞えば、いつかは……と。しかし、俺という存在があるということは、この国ならず、他の国にも周知なのは変わらないんだよな」

「え?……ええ、そうですね」

と、王子の話を受け入れて頷いたが、実際のところ私はリフィト王子が第一王子だと思い込んでいて、ライト王子の存在を知らなかったわけだが……。


しかしそれはあくまで、本ばかり読んでいた世間知らずの私の話だ。


「このままの状態でいればいずれ俺の存在が、国を脅かす原因にもなりかねない。この国の危機を招く恐れもある。……どうして俺はそんな簡単なことに気づかなかったのだろう。自分のことばかり考えて、深くそこまで考えることをしなかった。母があれだけうるさく言うのも疎ましいとしか思わずに。理由はちゃんとあったはずなのに」


王子は肩を落として、ため息を吐いた。


国外の人間だけではない。
いくら平和な国とて、裏で良からぬことを考える国民も、もちろんいる。

王子が外に出てこないことをいいことに、いつどこで利用されるか分からない。


それが原因で、今の国王妃の立場が揺らぐこともある。

さすれば国の平和は脅かされるだろう。


王子はそのことにようやく気づいたようだった。

私がハッキリと告げたことが良い方向へ進んだようで、ホッと安心する。






< 86 / 190 >

この作品をシェア

pagetop