素敵な王子様の育てかた。

最後の言葉に、動かしていた手が止まる。

……ん?

顔だけ王子の方に動かすと、王子はちょうど白いシャツのボタンを掛けていたところだった。

その表情に特別変化はない。


私のため?

たしかに、私がこの仕事を一手に引き受けているから、途中で気が変わって元に戻られるのは困る。

王子がこの部屋から出ることにみな期待しているわけで、その期待を裏切るようなことは避けたいし、せっかくここまで漕ぎつけたのだ、結局今までの侍女と変わらなかった、と幻滅されたくもない。

そういった意味から、私のために王子が努力するということなのだろうが。

……しかしなぜか違和感を覚えて、気になってしまった。


「どういう意味でしょうか?」

「なにが?」

「私のためって?」

「え?……ああ。言葉の通りだけど?」


そう言って王子はキョトンと私を見ている。

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