王子様とハナコさんと鼓星
「ありがとう。なんか、かっこ悪い」
「え?何がですか?」
「見苦しい所を見せたから。幻滅した?」
「してませんよ!驚きましたけど、凛太朗さんでも飲み過ぎてこんな事になるんだなって…意外です。あ、これも飲んで下さい」
ウェットティッシュと一緒に、たまたま買っていたスポーツドリンクの蓋を開けて渡す。
私と視線を合わせないままそれを飲み、いつもの顔色が戻ってくると頬が少し赤くなっていた。
もしかして、恥ずかしいのかな。そうだよね。こんな所を見られたんだもん。逆の立場なら数日は顔を合わせられない。
だけど、凛太朗さんの背中を撫でている時、心配したけれど…本当は新たな一面を見た気がして嬉しかった。
王子様なんて言われているくせに、こんな面もあるんだなって。
「なるよ。実は結構ある。華子にだけは見られたくなかった。しかも、良いムードの時に。華子の前では王子様でいたかったのに。こんな所、全然王子じゃない」
失笑する彼と反対に私の顔には笑顔が浮かんでくる。
「そんな事ありません。凛太朗さんはいつも私の事を助けてくれましたから。たまには、私が手を貸す側でも良いと思います。そんな事より、立てますか?着替えて寝ましょう?」
いつも凛太朗さんがするように手を伸ばす。その手を掴み立ち上がる。