王子様とハナコさんと鼓星
「そう。確か、彼女はいないよ。狙ってみたら?」
「ち、違いますってば」
「じゃあ、どんな人がタイプなの?」
ハンバーガーを置いてコーヒーを飲みながら問われ、私も頼んだオレンジジュースを飲む。
「それ、聞きたいですか?私なんかのタイプ」
「知りたい。教えて」
「じゃあ、社長はどんなタイプがいいですか?」
「俺?俺は…タイプとかは特にないよ」
「それ、1番ずるい答えです」
さすが社長。王子様らしい完璧な答え。そんな事を言われたら社長の事が好きな女の子ならコロッと落ちてしまう。
「それで、村瀬さんのタイプは?」
「では、私もタイプはありません」
「あ、それは1番ずるい答えだね」
「なっ…」
それ、私が言った言葉なのに。また、からかわれたんだ。恥ずかしくなり赤くなる顔を隠すようにハンバーガーを食べる。
「ごめんね。少し意地悪しちゃったかも。村瀬さんって反応が素直で可愛いから」
「…か、可愛くありません。お上手ですね」
生まれてこの方、男の人に可愛いなんて言われた事はない。唯一付き合ったたった1人の元彼にもそんな言葉は言われていない。
「そうかな?女の子はみんな可愛いよ」
「そ、そうですか…」
そ、そう言うことですか。社交辞令だと分かっているのに、ドキドキしていた事は秘密だ。