王子様とハナコさんと鼓星


そう言うと、志田さんは眉間にシワを寄せた。



「あなた、何を言っているの?トイレの在庫の事なんて言ってないわよ。私は、客室に使う洗剤の在庫が残り1ケースしかないって言ってんのよ」


「え……あ…は、はい…」

「あなた、なんでトイレ用具のチェックの時に客室のも見ないわけ?自分のがあればそれでいいって考えなの?どうするのよ、明日は土曜日なのよ?今から発注しても間に合わないじゃないの!」


「も、申し訳ありません…」


ミーティングルームの外にまで聞こえそうな大声に私も含め、黙って見ている主任や他のスタッフもビクリと肩を震わせた。


「ねぇ、どうするの?あなたのせいよ?責任取れるの?!」


「……っ」


志田さんはこうやって、ミスを理不尽に押し付ける。客室清掃の倉庫とトイレ倉庫は場所が違う。

強い薬品もあるため、基本的には鍵が掛かっていて自由に出入りなんて出来ない。だから、客室清掃が終わってから最後に戻って来た人が主任から鍵を借りて在庫をチェックして施錠する。


よって、私は入社したばかりの時にチラリと見ただけで入った事はないし、許可なく入らない。
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