王子様とハナコさんと鼓星


その日、結局1日中志田さんは怒り心頭だった。客室清掃時も関係のないスタッフに八つ当たし、皆んながピリピリしていたとアルバイトさんが言っていた。


こう言う時は、トイレ掃除で離れているから本当に良かったと思う。


「それにしても、桜はまだかな?」


そんな事を思いながらスマホをみると18時30分を過ぎている。今日は、桜と明日の休みが重なっているため飲みに行く約束をしていたのだ。

更衣室で待ち合わせをしているもの、桜はなかなか姿を現さない。仕事が長引いているのかな?

手にあるスマホでネットニュースをみる。少し時間がある時はつい徘徊してしまう。

芸能人の結婚や社会情勢、占いや国内ニュースと目に付いたものを適当に読んでいく。


「あ、この服かわいい」

そしてたまに標示される広告に目を引かれ見ているニュースから脱線してしまう。


最近服とか買っていない。明日、桜と買いに行こうかな。

明日の予定を考えていれば、更衣室のドアが開きそこから息を乱した桜が顔をだした。


「華子!ごめん!」

「あ、お疲れ様!って、どうしたの?そんなに慌てて」


「それが、ちょっとシェフにコンテストで作る飴細工の助手頼まれて…ご、ごめんね!今日は駄目かも!明日は休みでしょ?なんか奢るから今日はごめん!」

「そっか。わかった。コンテスト近いもんね。気にしないで頑張って」


「ありがとう!待たせたのに、本気でごめん!なんとか隙を見て抜け出してきたの、もう行かないと!夜、電話するから!」


手を振ると桜はまるで嵐のように去っていく。


1人残された更衣室。静けさだけが残る。スマホをしまい、バックを持ち肩にかける。

仕方がない。残念だけど、買い物して帰ろうかな。そのまま更衣室を出る。
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