王子様とハナコさんと鼓星


「待って。それは、ダメだよ」

「……え?」

壁をトントンと2回叩く音が聞こえ、直ぐに聞き覚えのある声が正面から聞こえてきた。


3人でその方向をみると、そこには社長の姿。壁から手を離して、驚く2人を通り過ぎ私の肩に手を置いた。


「社長…お、お疲れ様です…」


声を震わせ主任が口を開く。顔が強張り、ゴクリと良い音を立て息を飲む。すると先ほどまで怒り狂っていた志田さんはコロッと表情を変え微笑んだ。


「お疲れ様です。社長」

「うん…お疲れ様」

「こんなところまでどうかされたのですか?」


「ちょっとね。それよりさ、こういうの良くないよ」

「え?いやだ、何のことでしょうか?ふふ」


口元を覆い声色を変えて微笑む。つき数秒前とはまるで別人のよう。

あからさまな態度に、社長は肩から手を離す。そして一歩前に出て腕を組んだ。
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