王子様とハナコさんと鼓星


「あんまり言いたくないけど、2人の為にならないと思うから言わせてもらうよ。2人とも、スマートじゃないね。かっこ悪い。くだらないね」

「…え?」

背中越しに聞こえる低い声。いつもの声とはどこか違う声のような気がした。


「俺はね、多少の事は目を瞑るよ。チャンスも与える。それは変わって欲しくて、変わってくれると信じているから与えるものなんだよね。でもね、そのチャンスを棒に振り、己を過信して人を蔑む人間はこのホテルにはいらないかな。俺が言いたい事、大人ならわかるよね?」


「……っ」


「それと、彼女は村瀬華子って名前がある。あなたって呼ぶなんて感心しない。志田さんだっけ?そうやって感情に任せて怒鳴っても周りが離れていくだけだよ。だから、前の系列ホテルから左遷されたんだよ。同じようなことをするの?俺のホテルで。大した自信だな」


顔を上げ、志田さんが持つスマホを取る。


志田さんの顔から笑顔は消え、真っ青に染まっていた。今にも泣き出しそうな顔。
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