優しいさよなら
大好きだから埋めてあげる


入社して2年目、佐喜子さんに転勤話が持ち上がった。

ロンドンの販売子会社の立ち上げ。

語学力を買われてのことだったらしい。


佐喜子さんはその話を受け、高山くんは佐喜子さんの決心を受け入れたのだろう。


2人の様子は何も変わらなかった。


入りこむ隙なんてどこにもない。






佐喜子さんがいなくなって1年が過ぎる頃、
高山くんは社内の女の子に告白されても『好きな人いるから、ごめん』と全て断っていると聞いた。


ちゃんと佐喜子さんと続いているんだーーーー
遠距離恋愛でも。




わたしたち同期はみんな仲が良く、月に1度は集まって遊ぶ。


「高村ぁ、お前合コン行ったんやて?」


同期の飲み会、居酒屋の座敷で隣に座った適度に酔った営業部の佐橋に絡まれる。

「お年頃なんやし、別にええやん」

「成果はどうやったんだよ?」

「佐橋には教えへん」

「なんやねん、教えろやー、オレとお前の仲やん」

そう言った佐橋が肩を抱いて顔を近付けてきた。
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