元社長令嬢は御曹司の家政婦
「お腹の風邪ですね。 
一日二日で症状もだいぶ落ち着いてくると思いますよ。お薬出しておきますので、しばらく様子を見て全く良くならないようでしたら、またきてください」  


......風邪?

何か重大な病気かもしれない、もしかしたらもう手遅れなのかもしれない。  

色々と検査を受けた後、あれこれ心配していたのが馬鹿馬鹿しくなるくらいにあっさりとそう言われて、拍子抜けすると同時にほっとした。良かった......。
  
   
そのあと、病院でお会計をしている時に足元を見て、はっとした。何よこれ、ゴミ出し用のサンダルじゃない。

全身ブランド服で固めているくせに、すっぴんで髪もボサボサな上に、足元はだっさいどうでもいいようなサンダル。

あまりにもミスマッチな自分の姿に、恥ずかしくなるというようりもなんだか笑えてきた。

誰かにみっともない姿を見せることなんて絶対に嫌。
人一倍プライドが高いこの私が、こんな血統書もついてないどこからきたかも分からない猫一匹のために、サンダル......。今までの私では、考えられなかったことね。

......本当に、猫なんて大嫌い。

猫一匹のために、こんなに心配させられて、みっともない姿まで見せて、バカみたい。バカみたいよ、本当に......。
< 44 / 70 >

この作品をシェア

pagetop