元社長令嬢は御曹司の家政婦
何を言われたのか意味が分からなくて固まっていると、おいでと手招きをされたので、いったん皿洗いを中断して、秋人の隣に座る。


「何か不都合はあるか?
君が望むものは何でも与えてやれる。
豊かな暮らしも、セレブな妻という地位も。
それ以外には何が必要だ?」


それ以外は......。

薄く口元に笑みを浮かべる秋人はきっと、知ってて言ってる。何て意地の悪い。
  

「愛、だったか?
もちろんそれも与えてやれる」


私の長い巻き髪を撫でると、口元に笑みを浮かべながらも、それまでとは違って真剣な目で私を見つめる。


「俺は君を愛してる。
もう気づいているんだろう?
俺は遊びで女性を抱く趣味はない」

 
......一線を越えたあの夜から、何度か秋人と体を重ねたけど、思ってたのと全く違った。

想像よりもずっと優しくて、そして情熱的だった。
なんとなく淡白そうだと勝手に思ってたけど、そんなことは全くなかった。

そもそもその気になればいくらでも良い女を抱けるだろうし気まぐれに女に手を出すタイプでもないとは思っていたし。それに、あんな風に優しく情熱的に抱かれたら、嫌でも身を持って愛されてると分かってしまう。


最初から一貫してこんな感じだったから、一体いつから愛されていたのか全く分からないけど......。

思えば、最初から優しかったのかもしれない。

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