元社長令嬢は御曹司の家政婦
「今までお世話になりました」


それから、家政婦は手早く掃除を終えると、何のためらいもなく家を出ていった。


今まで雇ってあげていた私が明日からの生活に困っているというのに、血も涙もない。
明日からの掃除や料理や洗濯は誰がするのよ!


ああ、お金がない。
家事をしてくれる家政婦も雇えない、新しい服も買えない。海外旅行もいけない。
人間とは、これほどまどにお金がなければ何もできない生き物だったのね......。


改めてお金の価値を知った私は、生まれて初めてこう思った。働かなければいけない、と。

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