Dangerous boy
尤もな意見に、息苦しくなってきた。

「できれば、倉本がその女になればいいなって、思うけどな。」

「えっ?」

振り返った私に、部長はキスを落とした。

舌が絡まり、鼻で息がする音が聞こえる深いキス。

唇が離れると、あまりの気持ち良さに、私は思わずため息が出た。


「悪い。付き合ってからだと言い聞かせてたんだが、結婚の話が出て、抑えきれなくなった。」

少しだけ顔を赤くする部長に、この人は真剣な交際を望んでいるのだと、知った。

もちろん私だって、真剣な交際を望んでいる。

いい人ならば、そのまま結婚したいと思っている。


でも、いい人って?

安定した職業に、優しくて包容力があって、経済力がある人?

私は、益々自分の考えが分からなくなった。


「そんなに、悩まないでくれ。」

部長の切ない声が、聞こえてくる。

「ただ、お前の事が好きなだけなんだ。」

押し寄せる情熱に、そのまま飲みこまれそう。
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