副社長と秘密の溺愛オフィス
「……ど、どういうことでしょうか? わたしは――きゃあ!」


「危ないっ!」

 わたしが話をしている最中に体に〝ドンッ〟という強い衝撃が走った。前のめりになったわたしの身体を、副社長の逞しい腕が引き寄せて包み込んだ。

 何が起きているのかわからない。パニックになったわたしは体をこわばらせた。そしてそのままもう一度大きな衝撃が加わる。

 わたしは副社長に抱きしめられたまま、ウィンドウに叩きつけられた。

 な、何が起こったの?

 身体の痛みにたえながら、目を開き副社長の胸の中で彼の様子を窺う。

「……っう、い、乾。大丈夫か?」

「はい、えっ?」

 返事をした瞬間、グレーのスーツにポタリと何かが落ちた。

 暗がりの中でよく見ると、真っ赤な血だ。

「しゃ。社長! お怪我を!?」

「大丈夫だ。大きな声を出すな。頭に響く」

 顔を見ると額から鮮血が流れ出ていた。

 嘘! どうしよう、どうしたらいいの?

 早く助けを呼ばなくてはならない。しかしスマートフォンはどこかに転がってしまったのか近くにはない。
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