副社長と秘密の溺愛オフィス
 パニックになってその場にへたり込む。男たちに羽交い絞めにされているこの体は間違いなく〝乾明日香〟のものだ。

 驚いて固まっているところに、犯人のリーダー格の男がわたしの足元に倒れこんできた。

「ひゃっ……」

 いつのまにか拘束を解いた紘也さんが、倒れた男の胸倉をつかみ殴りつけた。他の男は恐れをなしたのか、さっさと逃げ出してしまう。

「や、やめてくれ。悪かった」

 それまでさんざん悪態をついてきた男が、紘也さんに許しを請う。彼は自分が拘束されていたロープで相手をしばりあげると、警察を呼んだ。

「大丈夫か? 明日香……」

 へたり込んでいたわたしの体を、紘也さんが支えてくれる。

 そうわたしは明日香だ。今は身も心も〝乾明日香〟である。

「紘也さん……わたしたち……」

「あぁ……元にもどったみたい――おい、大丈夫か?」

 さっきまでの恐怖と急に体が元にもどったこと……その両方を受け止められなくなったわたしの意識が薄れる。

 意識を手放す前にわたしが見たのは、心配そうにわたしを見つめる紘也さんの姿だった。
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