副社長と秘密の溺愛オフィス
 そうだった。この人は甲斐紘也だ。いつだって不可能を可能にしてきた。それを傍で見ていたのは、わたし自身だ。

「今までは創業者の親族だからと、庇い立てする輩もいたみたいだが、今回ばかりはかばいきれなかったようだな。今日付けで解雇。その後刑事告訴だ。そうでもしないと株主や取り引き先に示しがつかないからな」

「というわけで……千佳子は今、アタシとつき合ってるの、ね?」

 幹也さんの言葉に、千佳子さんは恥ずかしそうに――けれど幸せそうにうなずいた。

「ご心配をおかけしました。もとはと言えば、わたしの勇気がなかったのが原因なんです。本当はずっと幹ちゃんのことが好きだったのに」

「じゃあ、千佳子さんが言っていた〝好きな人〟って幹也さんのことだったの?」

 以前チョコレート専門店で話をしたことを思い出した。

「はい。え? でもそのお話、明日香さんにしましたか?」

 突っ込まれてドキッとする。そういえばあれは、見かけが紘也さんだったときだ。

「え、あはは……」

 なんとかごまかそうとしているわたしに気がついた紘也さんが、幹也さんと千佳子さんに向かって言う。
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