副社長と秘密の溺愛オフィス
「あの、わたしの顔、ひどい傷ありますか?」

 もしかしたらさっきの感覚は、事故の時のキズかもしれないと思い尋ねてみる。

 昨日は顔にキズとなると、わたしがショックをうけると思い医師も話をしなかったのだろうかと、予想してみる。

 しかし彼女は、思い切り頭を左右に振る。

「とんでもない。この世のものとは思えない程整った顔をしていますよ! 思わず見とれちゃいます」

「見とれる?」

 いまだかつてそんなこと言われたことがなく、驚いた。

「いえ、もう、わたしったら・・・・・・。とにかく心配でしたら、一度鏡を見てみるといいですよ。きっと安心なさるはずです。では、わたしはこれで」

 片付けを終えた彼女は、次の患者の元に向かった。

 残されたわたしは、とりあえず彼女の言うことに従うことにした。

「そうね。百聞は一見にしかずって言うものね。とりあえず鏡・・・・・・っと」

 そのときになって、ふと気がついた。

 自分の声が恐ろしく野太くなっていることに。
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