副社長と秘密の溺愛オフィス
「ただわかってると思うが、今回のことは俺だけではどうすることもできない。乾、君の協力が必要なんだ」

 副社長の言うことはもっともだ。

 今は彼がわたしであり、わたしが彼なのだから。

「わかりました」

 自分ひとりでは、途方に暮れるような問題でも、副社長と一緒ならば安心できた。

 暗闇の中で唯一の灯り――今のわたしには副社長の存在がまさにその灯りだった。

「とにかく、今から退院だ! 医者には了承してもらった。ほら、さっさと準備しろ」

 よく見てみると、副社長は昨日わたしが身に着けていた服にすでに着替え終わっていた。

 わたしは追い立てられるように、用意されていた副社長の私服に着替えて病院を後にした。
 
 病院前でタクシーを捕まえてふたりで乗り込んだ。副社長が告げた住所は、彼のマンションだ。

「とりえず、俺の部屋に行くぞ」

「はい」

 これからのことを、色々と話し合わなければならない。

 かといって弟もいるわたしの部屋で、こんなわけのわからない話をするわけにはいかないので、やっぱりひとり暮らしをしている彼の部屋が適切だろう。

 後部座席に乗ったわたしたちは、ふたりともしっかりとシートベルトを締めたのだった。
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