副社長と秘密の溺愛オフィス
 何を言っていいのかわからず口をつぐんだままのわたしの元に、やっと副社長がお茶を持って戻ってきた。お母様の前にお茶を置いたあと、わたしの隣に座るやいなや、話をはじめた。

「紘也さん……もう、お母様に話してしまいましょう。わたしたちの事」

「ひ、紘也さん??」

 わたし、副社長を一度も名前で呼んだことないのに、いきなりどうしたんだろうか?

面を食らうわたしに副社長は、お母様にみえないように小さくウィンクをした。
 
話を合わせろってこと??
 
反対しようにも、すでに副社長は話を進めている。このまま彼の戦略にのるしかない。

「このようなかっこうでお話することではないのですが、わたしたちふたり真剣に付き合っているんです」

 えーーー! っと思わず声を上げそうになったが、なんとかこらえた。しかし驚きすぎて、一瞬息が止まった。

 いったい何を言い出すの? 

 慌てたわたしは副社長の暴走を止めようと、彼の足を膝でコツンとつついた。もちろんお母様には見えないように。

 けれどそんなわたしのことなど気にも留めることなく、副社長の口からはすらすらと嘘が飛び出した。

「実はわたしたち、出会ったころからお互い惹かれていたんです。でも恋愛に発展したら、仕事に支障がでると思いお互いそういった気持ちは閉じ込めていたんです。でも、やっぱりわたしが副社長の男らしい包容力、実行力、やさしさ、ダンディズム――」

「ごほん」

 自画自賛がずっと続きそうなので、とりあえず咳払いで話を本筋に戻した。
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