副社長と秘密の溺愛オフィス

⑥最初の関門

豪華なマンションのリビングに、重い重い空気が流れる。

 わたしと副社長が並んで座り、その前にお母様が難しい顔をして座っている。

 先ほどから三人、誰ひとり言葉を発することなく、物音さえもたてずにいた。

 重苦しい空気に耐えられない。

「あの、お茶淹れてきます」

「あら、紘也がわたしにお茶? 槍でも降るのかしら?」

 またやってしまった。わたしは今副社長なのに……。何か行動を起こすたびに失敗してしまう。焦っているわたしに気が付いた副社長が立ち上がる。

「お茶は秘書の役目ですから、わたしが淹れてきます」

 そういってキッチンの方へ消えていった。

 え、ひとりにしないで……。

 いくらオープンキッチンとはいえ、お母様とふたり取り残されるわたしの身にもなってほしい。

「とにかく今の状況を説明してちょうだい」

 腕組みをしたお母様が、怖い顔でこちらを睨みつけている。

 わたしはどうしたらいいのかわからず、小さく縮こまりチラリとキッチンのカウンターでお茶を淹れる副社長に助けを求めた。

 何か口ぱくで伝えようとしてくれているが、何をいっているのかさっぱりわからない。

「聞いてるの、紘也!」

「はぃいい!」

 思わず背筋を伸ばして返事をした。そんなわたしを見て副社長はキッチンで頭を抱えている。

「下手な言い逃れはできませんよ。彼女とはどういう関係なの?」

 やっぱりきた。完全に誤解している。

「あの、お母様……」

「お母様ですって! そんなことで機嫌を取ろうとしてもそうはいきませんからね。きっちり説明を聞いて納得できるまで、今日は帰りませんから」

 はっきりと宣言されて、途方に暮れる。
< 48 / 212 >

この作品をシェア

pagetop