クールアンドドライ

　「思い出したら、教えてやる。」
と、言われてしまった。
まぁ、いっかぁ。後で、お姉ちゃんに聞けばいいや。と、大して気にもしなかった。

　メニューを見ながら、店員さんに注文をすませると、課長が「今月は達成出来そうか？」と聞いてくる。
　はぁー、やっぱりその話か。まぁ、休憩中とは言え、上司と食事するって、そう言うことだよね～。とんかつが来る前に終わらせようと、
「大丈夫です。後一件ですから。二週間あれば、何とかなります。」
「そうか、ならいい。」
思いの外あっさりと返されて、少し戸惑う。
でも、ご飯は美味しく食べたいので、そのまま黙っていた。

　ああ、早くこないかなぁ、ヒレカツ。
奢ってもらえるらしいから、デザートまで付いてくるランチセットを頼んだ。
ああ、楽しみー。
ずれてきたメガネを直しつつ、周りをキョロキョロと見回していた。
　
　店員さんが、こちらにヒレカツを運んで来るのが分かった。
うわーい、やっときたー。
頂きます。と呟いて箸をとり、食べ始めた。
　あああ、旨い！
サクサクの歯触り、中のヒレは柔らかくてしっとり。ヒレ肉は、脂っぽくなくてイイ。
ヒレカツとご飯を味わってから、あ、味噌汁飲もうと思い、お椀を口に近づけたら、メガネが曇った。
前の席から、ぷっという失笑がもれた。
チッ、せっかく自分の世界に浸ってたのに、笑うんじゃねー。