クールアンドドライ
 お椀を置いて、メガネを拭こうと外すと、目の前から手が伸びてきて、メガネを取られた。

 なにすんじゃい!

 目の前の男を睨みつけるが、睨まれている当人は、全然気にしていない。
「度は入ってないんだな。何で?」
と、呑気に訊いてくる。
何と言ったらいいんだ?イライラしてくる。
「それ、パソコン用なんで。返してください。」無愛想に言い返した。
「度が入ってないんだから、外して食えば?その方が可愛いぞ。」

 一瞬ドキンとしたが、気のせいにした。
うぜーよ!心の中で悪態をつくことで、気を取り直す。
大丈夫、大丈夫よ、咲希。
メガネがなくたって、無表情は装える。

 メガネは諦めて、食事を再開する。
味噌汁もしょっぱくなくて丁度いい。
そして、またヒレカツを味わう事にした・・
目の前の男がジッと見ているのが分かる。
視線を上げると、目が合う。

 「でけー口開けて、よく食うなぁ。」
感心したように言われた。

 「大きなお世話です。」
ムキーーーとなったが、冷静になることに専念した。こいつの前で、感情を露わにしたくはない。
ひたすら、食べる事に専念した。

 デザートまで食べ終わって、満足感に満たされる。ああ、おいしかったー。
さて、メガネを掛けようと思って、メガネが置かれている筈のテーブルの隅を見ると、、
 
ない!!
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