クールアンドドライ
「そうだったんですね。そう言えば、課長のお母さん、看護婦さんでしたよね。」
そんな事から、何故か、課長と話が盛り上がってしまった。
ふと、気付き、「では、失礼します。」そそくさとその場を去った。

 ああ、失敗した。
メガネを外しながら、ため息がでる。
だめだなぁ、お酒飲む時にメガネを掛けても、効き目がない。
やはり、所詮自己暗示だ。

 それから、楽しく飲んでいた。
夏の飲み会で、座敷って最悪とか思っていたのに、今は最高だ。
隅に寄って、座布団敷き詰めて、横になれる。
スカートじゃなくてよかった。

 ふと、自分を呼ぶ声がした。
「滝本、起きろ!」そう、繰り返されている。
肩を叩かれて、ふと目が覚めた。

 「か・・ちょう?・・ん?、あれ?皆は?」

「もう、帰ったよ、皆。俺にお前を押し付けてな!」

「はぁー、それは、すみません。」
うーん、眠い。
まだ、ちょっと、頭がぼーっとする。
どうやら課長は、私のせいで帰れなかったらしい。
課長が私の荷物をもって、私の肩を支え、歩き出した。
ふらつく足元をなんとか前へと運ぶ。

 やっとのことで、外に待たせていたタクシーに乗り込んだ。
パンプスをうまく履けなくて、苦労した。
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