クールアンドドライ
 ガチャッと、音がして課長が出て行ったんだと、気付いた。
なんだか、寂しそうにやるせないといった感じで気にするよ俺だって、と言って溜め息を吐いていた。
 私に言われたら、尚更って、どういう意味だろ?それを聞けずに、固まっていたら、課長は、早く帰れよ、と言って出て行った。

 家に帰って来てからも、課長の悲しそうな、寂しそうな、顔が頭から離れない。
1人で夕飯を食べながら、思い出す。
なんか、思ってたイメージと違う。
課長は、部下との信頼関係なんて必要としてないと思ってた。
 部下が自分に付いて来ようが来なかろうが、関心なんて無くて、売り上げが全てだと考えているんだろうなぁって、思ってたのに。
 あんな風に言われてしまったら、なんだか気まずいっていうか、罪悪感っていうか・・・
 ん~、でも、最近、課長が怒鳴ってるのを見てない。
単に、私がノルマを達成出来てるから?
それとも、課長が意識を変えたのか?
そう言えば、最近、部下の相談に乗っているのを、見かけた。

 彼も変わろうとしてるのかしら。
もし、それが私の言葉がきっかけだとしたら?
ちょっと、嬉しかったりする。
課長の怒鳴り声を聞かなくてすむのなら、良いことをしたよね。

 課長にしたら、生意気な小娘に言われてショックだったんだろう。
だから、“尚更”なんだろうか?
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