運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
言いながら、私はいつの間にか自分自身が藍澤先生を“悪魔じゃない”と強く認めたがっていることに気が付いた。
完全に疑いが消えたわけじゃない。でも、信じなければきっと始まらない。
“悪魔”にまつわるたくさんの噂に踊らされ、不安に曇った目で彼を見るのは終わりにして……私、本当の藍澤先生と、もう一度向き合いたい。
そんな思いを抱き、今まで心にかかっていた濃い霧が、徐々に晴れていくような感覚がしていたその時だった。
「うっ……」
突如、早苗先生がうめき声を上げた。そして次の瞬間にはもう、着ていたシャツの胸元を握りしめるようにして、床に倒れ込んでいた。
「さっ、早苗先生……っ!」
うそ……! もしかして、心臓の病気が……?
私がオロオロしている間に、真帆は携帯を手にして早苗先生に声を掛ける。
「救急車、呼びます!」
しかし早苗先生はすでに意識を失い、返事ができる状態ではない。