運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


週明けの月曜日、午後三時ごろ。

私は就職先でもある父の病院――神鳥記念病院を訪れた。

場所は港区台場。海の見える大病院ということで患者さんからの人気も高い、有名な総合病院だ。

四月から私はそこで、副院長をしている女医さんの秘書をすることになっていて、就職前に一度挨拶を、ということでやって来たのだ。

といっても、院長の娘である私は副院長とも顔見知りなので、堅苦しさはなくほとんどが雑談だった。


「とんだ災難ね。親の勝手で結婚相手が決められているだなんて。しかも、相手があの男とは……」

「そうなんです……早苗先生も知ってますか? 白衣の悪魔の噂」


副院長室の応接スペースのソファに座り、私は北条早苗(ほうじょうさなえ)先生と向き合っていた。

早苗先生はすっきりとしたショートボブヘアがよく似合う美人で、三十七歳。この病院の副院長であると同時に、優秀な内科医でもある。

院長秘書の工藤さんが優しい兄なら、早苗先生はしっかり者の姉という感じで、こうして相談に乗ってもらうこともしばしばだ。


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