運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「美琴お嬢様」


工藤さんの優しい声に呼ばれてハッと我に返る。すると彼は椅子に座る私の真横にひざまずき、私の手をそっと握った。


「このまま、あの男の妻になって……仕事上でも秘書になる。お嬢様はそれでよろしいのですか?」

「工藤さん……」


口調は優しいけれど、“考え直した方がいい”と言わんばかりの、強い視線。私が答えを出せずにいると、手を握る力にギュッと力を込めた工藤さんが続ける。


「……あなたが傷つくのを傍で見ているだけなんて、我慢がならない。いっそ、僕のものにできたらどんなにいいか」

「え……?」


それって、どういう意味……? きょとんと首を傾げる私に工藤さんは苦笑し、私の髪をそっと耳に掛けながら愛しそうな瞳をして言った。


「相変わらず鈍いですね。僕は、あなたのことが好きなんですよ。あの男なんかよりずっと前から、あなただけを想っていた」


う、うそ……! これって、告白されてるんだよね? 工藤さんが、私を? そんなの思ってもみなかったよ!

びっくりしすぎて言葉が出てこず、金魚みたいに口をパクパクさせる私。


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