運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「返事は、今すぐでなくていいです。ただ、僕の気持ちをわかっていてほしかったので」

「工藤さん……」

「今のところ、お嬢様の気持ちを無視して無理やり奪おうなどとは思っていませんが……あの男の行動を僕自身が許せない場合、多少強引なこともするかもしれません。その時は、どうかお許しを」


工藤さんは今までお兄ちゃんのような存在だったから、男性として意識したことがなかった。しかし思いを告げられて一気に彼の印象が変わり、どぎまぎしてしまう。

“多少強引なことをするかも”なんて宣言までされて、平常心でいろという方が無理だよ……。

パソコンに向き直っても作業は全然進まず、なかなかパニックを脱することができない私に、工藤さんが苦笑する。


「……すみません、仕事中にする話ではありませんでしたね。そろそろお昼ですし休憩にしましょう。午後は、僕も私情をを挟まないようにします」

「わ、わかりました」


……よかった。休憩の間に、なんとか気持ちを切り替えよう。

工藤さんが部屋を出て行くと、私はお財布を持って院内のコンビニを目指した。


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