眠らせ森の恋
 でもまあ、よくやったな、と言われても、この外見に作ってくれたのは親なので、私の手柄ではないのですが、と思っていると、それが伝わったようで、奏汰は、こちらを見上げ、

「同じ容姿でも年配の人間に受けるかどうかは性格による。
 表情に滲にじみ出てくるものがあるからな」
と言ってくる。

「白河さんは今、体調が思わしくなくてな。
 そう長くはないと言われている。

 仲人をされるのが趣味で、次で百組だったのにと病室で言っておられるそうだ」

「次で百組ですか。
 達成出来なかったら、今にも化けて出て来そうですね」
と思わず言ってしまい、おい……と言われた。

 しかし、武蔵坊弁慶や深草少将ではないが、その手の目標を打ち立てると、ギリギリのところで達成できない、というイメージがあるのだが。

 だが、これで白河さんに思い残すことがなくなると言うのなら、まあ、いいことしたかな、と遠目にしか見たことのない人の良さそうな老人の姿を思い浮かべ、思っていた。
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