眠らせ森の恋
 いや、もともとレパートリーが少ないうえに、奏汰はよく食べる。

 毎食、何品も作っていたら、すぐにもネタ切れを起こしそうだったからだ。
「えーと。
 男の人が喜ぶような感じの」
と言うと、

「あら、なによ。
 あんた、誰か料理作ってあげるような人が居るの?」
と英里は興味津々訊いてくる。

「そう。
 それで、酒がよく進んで、こてっと寝てしまうような料理がいいんですが」

 それには答えず、そう言うと、

「男寝かせてどうすんのよ、逆でしょ。
 あっ、西和田さーん」
と英里が秘書室に戻ってきた西和田を呼ぶ。

 あっ、こらっ。
 しゃべるな、と思って見ると、英里は振り向いた西和田に、

「西和田さん、秋名さんって、誰が付き合ってる人が居るらしいですよ」
といきなりチクッていた。
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