眠らせ森の恋
 だが、西和田は、
「知ってる」
と素っ気なく答えて、行ってしまう。

 例え、相手が誰なのか知らなかったとしても、西和田さんにはまったく興味のない話題だと思いますが、と思っていると、英里は振り返り、

「なによ、あんた。
 西和田さんにそんな話までしてんのーっ」
と言い出した。

「ええーっ?
 そこでも引っかかるんですかーっ?」

 私がもう売れてるんなら、西和田さん関係ないんだからいいじゃないですかーっ、と訴える。

 すると、
「ま、それもそうね」
と言ったあとで、

「じゃ、さっさとその誰だか知らない人とくっついちゃってよ」
と言ってくる。

 そのとき、ちょうど社長がやってきた。

 おはようございますー、と頭を下げる英里たちに、その人ですよ、その人、と心の中で思っていた。

 つぐみがぺこりと頭を下げると、奏汰は他の社員にするように鷹揚に頷いて行ってしまう。

 ……なんかこれはこれでムカつくな。

 いや、家の外では、他人行儀でいいのだが。
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