眠らせ森の恋
 



 ……魔女が怪しいスープを作っているようだ。

 奏汰が家に帰ると、つぐみはキッチンに立ち、せっせと夕食を作っていた。

 鍋でコトコト、スープ煮ているようなだのだが、とろみがあるのか、焦げつかないよう、ひっきりなしにかき混ぜている。

 勝手に撹拌かくはんしてくれる鍋でも買ったらどうだ、と思いながら、背後から見ていると、しばらくして気づいたらしく、つぐみは、うわっ、とマヌケな声を上げていた。
「なにが出来るんだ?」

と訊くと、つぐみは勝ち誇ったように笑って言う。

「スープですっ」

 いや……見ればわかる。

 近くに行くと、いい匂いのする湯気が顔にかかる。

「まだ寒いので、温かいスープを飲むと、眠くなるかと思いましてっ」
と笑顔で言ったあとで、一瞬、黙り、

「……お疲れのようなので」
と付け足していた。

 なるほど。

 西和田が言うように、俺を寝かしつけようとしているらしいな、と思う。

 まさか、自分が襲われないようにとか?
 莫迦なのか?
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