眠らせ森の恋
 



「西和田さんが外立って話聞いてましたよ」
とドアを開けた正美がお盆を手に振り返りながら言ってくる。

 つぐみはまだ、英里に頬をひねられていた。

 ええっ? と今更遅いのに、英里は慌てて手を放す。

「なんてことしてくれんのよ」
と英里がこっちに向かって言ってきた。

「見られてたらどうすんのよ」

「いや……いじめた人間に責任取れとか、どんなジャイアンですか」

「あんたの何処がいじめられてんのよ」

 いじめられてるのは私の方よ、と英里は言い出す。

「ええーっ?」

「――とかデカイ声で言い返してきて、不満げな顔が出来る奴はいじめられてるうちに入らないわよっ」
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