眠らせ森の恋







 そのあと、奏汰がソファに座り、壁にかけられた大型テレビでニュースを見ていると、つぐみがすうっと近寄って来た。

 後ろ手になにか持っている。

 ……鈍器か?

 今、酒を作ってやったのに、と思ったが、本のようだった。

 スカートの後ろから、チラと見えるその表紙の色には覚えがあった。

 さっきの催眠術の本だ。

 まさか、俺にかかれというのか……?

 つぐみっ。
 俺は鳥にはなれんぞっ!
と思いながら身構えていると、つぐみは、やけに愛想のいい笑顔を浮かべ、言ってくる。

「奏汰さん、今日、図書館で催眠術の本を借りてきたんですよ」

 そこはしゃべるのか……?

 素敵な笑顔で、
「かけてみてもいいですか?」
と言ってくるつぐみに、警戒しつつも、

「……いいぞ」
と答える。

 断ったら、次はどんな手段に訴えてくるかわからないからだ。
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