眠らせ森の恋
「ねえ、社長」

 まだ社長と呼んでるな……。

「……なんで私なんですか?
 たまたまそこに居たからですか?

 そう言うのって――」

 なんか嫌です、とつぐみは言う。

 理由があったらいいのか?

 理由があったら、俺を好きになってくれるのか?

 いや、別に好きになって欲しいと願って、此処に呼んだわけではないのだが、と言い訳のように思う。

 つぐみ、と手を伸ばし、抱き寄せたかったが、目を覚ましたら逃げてしまうのがわかっていたので、そのまま目を閉じ、じっとしていた。

 つぐみは、
「おやすみなさい」
と寝ようとして、いや、待てよ、と起き上がってくる。

「意外に寝相が悪くて落ちてくるかも」
と呟いて、布団を引き離していた。

 待て、俺の寝相は悪くない。

 知らないだろ、お前。

 一度しか一緒に寝たことないから。
< 152 / 381 >

この作品をシェア

pagetop