眠らせ森の恋
 狸寝入りなどするものではない。

 妻、いや、まだなってはいないが、妻っぽいものの本音が聞けてしまう。

 いや、まあ、昼間充分聞いたが……。

 つぐみが、とととととっと何処かに消えたと思ったら、リビングと続きになっているキッチンに行ったようだった。

 薄目を開けて見ると、残っていたサングリアを呑んでいるようだった。

 まだ呑んでるのか……。

 つぐみは、残っていたフルーツにボトルからサングリアを継ぎ足し、グラスを眺めて、にんまり笑っている。

 サングリア。
 聖なる血の酒、か。

 ……気に入っていただけたようで、なにより。

 つぐみは洗面所に行き、歯を磨いたりして、寝る準備をし始めた。

 鼻歌が聞こえてくるぞ、おい。

 俺を寝かせて、ご機嫌だな……と思っていると、すっかり寝支度を調えたつぐみが、側に来て、また顔を覗き込んできた。

 寝てると不用意に近づいてくるな~。

 襲ってやろうか、と思ったとき、つぐみが寝ている自分に呼びかけてきた。
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