眠らせ森の恋
 




 なんか変な社長押しの人になってしまったじゃないか、と思いながら、西和田が廊下を歩いていると、専務に出会った。

 自分よりも小柄だが、そんなことは問題にならないくらい、如何にも専務、といった風格が貫禄がある。

「やあ、西和田くん。元気にやってるかね」
 足を止め、そう言ってくれる専務に、はい、と最敬礼で頭を下げた。

 院に行くかどうしようか、迷っているうちに、なんとなく就職活動しそこね、なんとなく、コンビニでバイトをしていた自分がこの会社に入れたのも、専務のお陰だ。

「まあ、社長を助けて頑張りなさい」
と言ってくれる。

 頭を下げ、専務が通り過ぎるのを待った。

 ふう、と息をつきながら、
『西和田さんは本当に社長のことがお好きなんですね』
というつぐみの言葉を思い出していた。






< 163 / 381 >

この作品をシェア

pagetop