眠らせ森の恋
 



 奏汰が社長室に居ると、西和田が仕事のついでに、
「社長、女性の方を床に寝かせるのはどうかと」
と言ってきた。

 お前、スパイのくせに、そんなことにまで口出してくんなよ、と思いながら、奏汰が家に帰ると、つぐみがソファでまた本を読んでいた。

「今日はなんの本読んでんだ?」
と訊くと、つぐみは慌てて本を隠す。

 読み耽っていて、玄関が開いたのにも気づかなかったようだ。

 ……いっそ楽しみになってきたな、と思っていると、つぐみは、
「すみません。気づかなくて」
と言いながら、さりげない風をよそおい、本をクッションの下に隠していた。

「夕食出来てます」
と立ち上がる。

 ああ、と言いながら、つぐみがキッチンに立ち、背を向けた隙に、そっとクッションを動かして、伏せてある本の表紙を盗み見た。
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