眠らせ森の恋
「お前を此処に呼び出すのなら、叱る感じがいいだろうなと思って」

 緊張していた分、行き倒れそうになる。

 いやいやいやっ。
 めちゃめちゃ身構えてしまったではないですかっ。

「リアル過ぎです~」
と文句を言うと、西和田は、ははは、と笑い、

「で、なんで、寝不足なんだ?」
と改めて訊いてきた。

「スパイ活動熱心ですね……」

 自分がいろいろありまして、と言ったので、いろいろとは社長のことだろうと思って訊いてきたのだろう。

「でも、これは幾ら西和田さんでも話せませんね」

 怒られないのならいいや、という安心感もあり、ぷい、と顔を背けると、西和田は、
「そうか」
と言って立ち上がり、いきなり、ドアを開けて叫ぼうとした。

「此処に社長の奥さんが――っ」

 うっ、と西和田が声を上げる。

 思わず、横から腹を殴っていた。
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