眠らせ森の恋
 




「入れ」
と小会議室のドアを開けた西和田に言われ、

「し、失礼します」
とつぐみは緊張して中に入る。

 しかし、釈然としないな、と思っていた。

 朝の気分よりももっと。

 ちょっと寝不足だったと言っただけで、何故に私は叱られるのでしょうか、と思っていると、西和田はどっかりとホワイトボードの前に座り、

「座れ」
とつぐみにも言った。

「は、はい」
とかなり離れて、戸口付近に座ると、

「何故、そんなに離れる?」
と問われた。

 ……逃げられるようにです、と思ったが、学校の部活ではないのだ。

 叱られている途中で逃げ出したら、怒られる、では済まないだろうな、と思っていたら、西和田は、突然、いつもの口調で、

「で、なんで、寝不足なんだ?」
と身を乗り出し、訊いてきた。

 おや? と思っている、つぐみのきょとんとした顔を見、
「なんだ、俺が怒ってると思っていたのか」

 そうじゃない、と言う。
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