眠らせ森の恋
 お前が間違えてたところまで直しておいてやる、と言うと、側に来たつぐみは取り返そうとしながら、

「奏汰さん、もしかして、編むの楽しいんじゃないですかっ?」
と言い出した。

「そんなことはない」

 っていうか、不用意に触ってくるなっ、二人きりなのにっ、と思ったが、相変わらず、つぐみは、ぎゃあぎゃあ言っていて、こちらが動揺していることにも気づかなかったようだった。

 夕食には、今の寿司よりも遥かに大きな江戸前の寿司が出て来た。

 ちゃんとつけあわせに、蓼(たで)や酢生姜、しきりに熊笹の葉までついている。

 俺は江戸の民が好まなかったトロも好きだぞ……と海老やコハダや玉子の並んだ寿司を見る。

「いい加減、普通のご飯で頼む」
と言ったが、そのうち、天ぷらも揚がってきて、結構美味しかった。

 カウンターで揚げたての天ぷら。

 悪くない。

 だが、そのうち、家の中に屋台を作り出したら困る。

 図書館に行って、普通に男が好みそうなメニューの特集をリクエストして来よう、と思いながらも、美味しくいただいた。





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