眠らせ森の恋
 まだ熱に浮かされているのだろうか。

 こんなところでなにを言ってるんだ、と思いながら、
「するって、今、言いましたよ」
と言うと、

「……俺はまだ言ってない」
と言う。

「白河さんのためとかじゃない。
 体裁を保つためでもない。

 俺と結婚してくれ」

「お熱がありますか?」
とまたつい、子どもに訊くように訊いてしまうと、

「……知恵熱がな」
と言う。

 前の席の数人には、その小さな声も聞こえたらしく、笑っていた。

「最初は白河さんのために、なんとなく始まったことかもしれないが、俺は今は本気でお前と結婚したいと思っている。

 今は――

 白河さんが反対しても、お前と結婚したい」
とまだ熱の残る手で手を握ってくる。

 だから、何故、白河さん基準、と思いながら、つぐみは言った。

「いいですよ」

「いいですよ? 上からか」
と奏汰は言う。
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