過保護な御曹司とスイートライフ


今までは、そのことについて、どうしてそこまで執着するんだろうと怖かったし、その理由探しばかりに気をとられていたけれど……その理由がわかった今、恐怖はなかった。

ただ……この優しすぎる人に、申し訳なさが浮かぶだけで。

L字型のソファ。成宮さんと辰巳さんは両端に、距離を取り座っていた。
辰巳さんは私が淹れた紅茶が入ったカップを口に運んでから微笑む。

「彩月のことだからね。他のことだって、彩月に関することならなんでも覚えてる」

そう言い切った辰巳さんをじっと見つめてから、成宮さんの前にも紅茶を置いて、その隣に腰を下ろした。

並び的には、L字の縦棒部分に成宮さん、私で座り、横棒部分に辰巳さんが座っているカタチとなる。

座った私に、成宮さんが「大丈夫か?」と心配した様子で耳打ちしてくるから、黙ってうなづいた。
大丈夫だ。もう、辰巳さんを怖がる理由なんてないのだから。

「それで、話があるってことだったね。彩月がここを出て部屋に戻るってことだったら嬉しいけど、どうだろう」

微笑みを浮かべたまま言う辰巳さんをじっと見つめ……それから「辰巳さん」と話を切り出した。

静かな昼下がり。柔らかい日差しがカーテンのレース越しに入り込み、雰囲気を温かくしているようだった。
優しい明かりのせいか、辰巳さんの表情がいつもよりも穏やかに感じる。

「私、先日、実家に寄って母と話してきたんです」

そう告げると、辰巳さんは持ち上げていたカップをピタリと止め、私を見る。驚きを浮かべる瞳が歪んでいくのを目の当たりにして、辰巳さんのこんな顔は初めて見るなと思った。

「実家にって……ひとりで?」

嘘だと思いたいような声で問われ、うなづく。

「はい」
「なんで……ご両親と話したいなら俺に言ってくれれば……」と話し出した辰巳さんが、途中で我に返ったみたいに「あ、いや……すまない。取り乱した」と小さく首を振る。

それから私を心配そうに見て「なにも、おかしなことは言われなかった?」と聞いた。

その顔を見て、やっぱり……と思う。


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