過保護な御曹司とスイートライフ


「俺も、たまに今どこにいるのかってわからなくなる。鈴村に愚痴をこぼしたときがそうだった」

一拍空けた成宮さんは「まぁ、俺のことはどうでもいいけど」と仕切り直して続ける。

「つまりおまえは、立ち位置だとかを見つめ直すためのきっかけと時間が必要ってことだろ」

ブラインド越しの日差しを受けた成宮さんが、明るく笑う。

「だったら、せっかくの機会を逃すべきじゃない。あの部屋から飛び出すのが怖いなら、俺が手を貸してやる」

ワクワクするような、こちらまでほわっと温かい気持ちになるような笑顔で誘われたら、断りの台詞なんて出てこないのは当たり前だった。

日を背に受けて笑う成宮さんがとても魅力的に思え、思わず見とれてしまった。

「成宮さんに手を貸してもらうのは、これで二度目になりますね。金曜日の夜と……今日の夜」

作戦は予定通り決行だ。

私の感じていた迷いも不安も、成宮さんがワクワクにすりかえてしまったから。


矢田さんは成宮さんを天使だなんて言っていたけれど。私には魔法使いの方が正しく思えた。



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