過保護な御曹司とスイートライフ


「その、解除のボタンあるだろ。それで開くから」

車のキーについているロック解除と同じようなボタンを押すと、小さな電子音が鳴り、すぐさまドアが開く。

今までのは誰でも入れるエリアで、ここからが住人、もしくは住人に許可された人だけが入れるスペースみたいだった。

足を踏み込んでまず一番に目についたのが、水槽だった。
正面、太さのある丸い柱には横に長い水槽が埋まっていて、色鮮やかな熱帯魚が尾を揺らし泳いでいる。そしてそこをぐるっと囲んでいるソファは白で統一されていた。

やたらとだだっ広いそこは煌びやかだとかそういう形容詞がよく似合う空間だった。

「こっち。部屋五階の角部屋だから」
「あ、はい」

エレベーターに向かう成宮さんの横について、代わりにボタンを押し、成宮さんの部屋に向かった。


『引っ越ししたっきり荷物片付けるのが面倒で放ってただけ』

そう話していたのは聞いた。ついさっきの話だし、もちろん覚えている。

私を住ませるにあたって、片付けたという意味に捉えていたけれど、どうやらそれは私の勘違いだったらしい。
広く綺麗な部屋には不似合いな段ボールがそこかしこに積み上がっていた。

ダークグレイ色をしたタイル張りの床。そこに転がる白い段ボールはざっと見ただけでも十個以上。

カーペットらしきものはグルグル巻きにされたまま、紐を解かれてもいない。
……絶対にクルッとしたクセがついちゃっているだろうなぁと考えると、なんだかムズムズしてくる。

こういう、荷解きとか片付けとかを放っておくのが苦手な性分が発動しそうだ。

二十畳はあるだろう部屋を見渡すと、なにひとつ片付けられていないように見えるけれど、カーテンだけはつけられていた。

ダークグレイの床にオフホワイトのカーテンがよく映えている。
南側の壁は一面大きな窓ガラスになっていて、日中はきっとたくさんの明かりが入り込むんだろうなぁと想像する。



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